2011年8月21日日曜日

 結核菌は、抗酸菌属という細菌の仲間の一つですが、抗酸菌属には、結核菌以外に、非結核性抗

酸菌やらい菌などがあります。非結核性抗酸菌によって起こった感染症が非結核性抗酸菌症です

非結核性抗酸菌症は昔から存在した病気だと思われますが、結核に似た症状・病態だったので、

結核が多かった時代には混同して考えられていました。しかし、結核菌とよく似ているが別の病原菌

を原因とする病気であることが分かり、40年ほど前から「非定型抗酸菌症」と呼ばれるようになりまし

た。近年は「非結核性抗酸菌症」という呼び方が一般的になり、次々と新しい非結核性抗酸菌が発

見され、罹患率も増加傾向にあります。
 非結核性抗酸菌は、約80種類が発見されていますが、人に病気を起こすのは15~20種類程度です、

結核菌は人に寄生する細菌(結核菌自身は環境中では生存できない)で、人から人に感染します

が、非結核性抗酸菌はもともと土や水など人間の身近な環境に生息していて、人から人に感染する

ことはありません。また、非結核性抗酸菌症が進行して結核になることもありません。

非結核性抗酸菌は、自然界に普通に存在しているので、だれにでも感染の可能性があります。し

かし、感染(病気がうつる)と発病(病気になる)は、全く別のことです。結核の場合でも感染を受けた

人の10%しか発病しないといわれていますが、非結核性抗酸菌は、結核よりも毒力が低いと考えら

れているので、ほとんどの人は、たとえ感染しても発病しません。しかし、肺に病気を持っている人

(肺結核の後遺症、肺嚢胞・気管支拡張症など)、エイズ患者、手術後などで体力や、体重の激減し

た人、はっきりした原因がなく発病する人もいますが、やせて神経質でストレスを多く抱え込みがち

な人に多いようです。

非定型抗酸菌症の主な症状は、咳・痰・血痰、全身のだるさ、微熱、体重減少などですが、何も症

状がなく検診などで発見されることもあります。確定診断のためには、喀痰からの菌検出が必要で

す。しかも、非結核性抗酸菌はもともと自然界に存在するので、痰の中に偶然は入っている場合も

あるので、複数回の菌検出が必要です。

(結核の場合は1回でも菌が見つかれば診断は確定します。)
 喀痰検査には(1)塗抹検査、(2)培養検査、(3)核酸増幅検査、(4)DDHマイコバクテリアがあります。

治療についても、結核と非結核性抗酸菌症では、かなりの違いがあります。結核の治療は、結核専

用の優秀な薬が開発され、標準治療によって治癒させることができます。それでも毎日確実に3~4

種類の薬を、6~9ヶ月間の服薬が必要ですし、結核菌に薬剤の感受性があることが前提になりま

す。非結核性抗酸菌症でも、カンサシー菌によるものでは、抗結核薬で治癒させることができます。

しかし、それ以外の非結核性抗酸菌症では、この治療の目的で開発された専用の薬はありません

結核や一般細菌に対する薬を代用し、幾種類かを組み合わせて使用します(主な治療薬)。治療期

間も年単位(2~3年)と長期になります。病気の進展をある程度抑えることはできても、完全に治癒

させることはできません。そのような理由で、MAC症で自覚症状が乏しく悪化もしない場合は、治療

するかどうかが問題となります。幸いこの病気は進行がゆっくりしていますから、悪化が見られなけ

れば服薬治療せず経過観察を続けることもできます。空洞などがあって、排菌が止まらず、病変が

限局していれば、外科手術も治療法の一つになります。

 非結核性抗酸菌症は、日和見感染症の一つです。日和見感染症とは、普通の健康な人では感染

症を起こさないような弱い病原体が原因で発症する感染症です。身体の抵抗力や自然治癒力が病

原微生物の増殖を抑えられなくなると病気は進行・進展します。薬物療法や外科治療は、病原体を

取り除く方法ですが、自然治癒力を増強することはできません。
 自然治癒力を増強するには、毎日の生活を整えること、身体の歪や食生活、精神生活の歪を正

すことが必要になります 


(1) 早寝早起きをして、規則正しい生活を送る。


(2) 食事は、少量でも栄養バランスの取れた食事をする。過食や偏食をしない。


(3) ストレスをため込まないように、人生に生き甲斐と感謝を。


(4) 身体の歪を取るためのストレッチと適度な運動。腹式の深呼吸。

言葉で書けば簡単ですが、実際に実行するのは難しいかもしれません。でも、この難病を克服する

ためには、100%でなくてもこれらの日常生活の改善を目指して努力する必要があります。